そばの歴史・栄養・作物・文化

そば畑 photo-ac.com
私事ですが、そばは、一日一食の私にはあまりにも
量が物足りず、外食で食べることは全くないですが、
夏の季節だけ冷たくして家でいただきます。
それが不思議なことに、昨年は猛暑にもかかわらず、
家でも一度もそばを食べませんでした。
そばだけではなく、ソーメンもうどんも冷たい?類は
一度も食べなかったんです。
海苔で巻いた梅干し入り玄米おにぎりだけ食べて、
体の声に耳を澄ましてそのとおりにしていました。
そして今年は、がらりと変わって例年に戻り、
冷そばと冷ソーメンを美味しくいただいています。
そば好きな方も多いと思いますので、
今日は雑穀栽培家の郷田和夫さんが、
季刊誌『つぶつぶ』(保存版)に寄稿したコラム、
『そばの歴史・栄養・作物・文化』
をご紹介致しますので、少しでも皆さんの
参考になりましたら幸いです。
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そば
歴史・栄養・作物・文化
季刊誌『つぶつぶ』(保存版)
郷田和夫
雑穀の中で唯一メジャー作物として生き残ったソバは、
縄文時代にはすでに食べられていました。
穀物の仲間に入っていますが、イネ科ではなくタデ科の
作物です。
夏から秋にかけて白い美しい花を咲かせます。
粉食が一般的ですが、ロシアやネパール、山形県など
では粒のまま食べる習慣があります。
【歴史】
■アジア大陸山間部から世界へ
中国で初めて文献に現れるのは北魏王朝(386年~
534年)の末年に書かれた『斉民要術』という
農業技術書です。
また、梁(502~557)の時代に刊行された書籍にも
「蕎麦」という文字の記載があります。
ソバの実は熟すると果皮が黒褐色に変わるため「烏麦」、
雪かと見まごう白い花を強調して「花蕎」「花麦」とも
書かれます。
日本で最初のソバ作りの記録は、
養老6年(722年)『続日本紀』の中に残されていますが、
その起源は紀元前4000年にさかのぼると言われています。
発祥の地については、
中国東北区(満州)説、アムール川流域のシベリア説、
バイカル湖周辺の北方起源説、中国南部説、チベット、
ヒマラヤの南方起源説などがあり、
アジア大陸中心部の内陸山岳地帯という大きな
くくりでとらえられています。
一方で、エジプトのナイル川流域をはじめ、
バビロニアのユーフラテス・チグリス両河流域、
インドのインダス河流域、中国の黄河流域などには、
はるか古代、ソバが栽培されていたとみられる跡や、
ソバの種子なども発見されています。
日本では縄文から弥生にかけて焼畑の主要作物と
してほぼ全域で栽培されていました。
■そば屋の始まり
江戸時代の初期、寛文4年(1664年)江戸に初めて
温飩(うどん)屋が現れ、
信州などの山間部で生まれたそば切りも江戸に進出、
「けんどんうどん・そば切り」の名がつきました。
その頃はうどんが大勢を占め、そば切りはうどんに
付随した麺に過ぎなかったのですが、
夜そば売りをす者が出て、30年ほどたった元禄3年
(1690年)の頃になると、「うどん」と「そば」の
立場がすっかり逆転してしまったということです。
そば切りは
最初は菓子屋の副業として始まりましたが、
需要が増えるにつれ追いつかず、
それを温飩屋が兼業するようになり、
さらに、日時を経るに従い、
そば切り専門店(そば屋)へと進化していったようです。

盛りそば photo-ac.com
【栄養】
■豊富な栄養で効能は数知れず
そばは、穀物の仲間なので主成分はデンプンですが、
米や小麦に比べて水溶性で吸収の良いタンパク質を
2倍以上含みます。
食物繊維もビタミンB群も豊富です。
特にコリンというビタミンが多く含まれています。
コリンは酒の害を減らす作用があるので、
酒を飲んだ後にそばを食べるのは理にかなっています。
かる、鉄、マグネシウム、ナトリウム、マンガン、
アルミニウムなどのミネラルにも富んでいます。
また、穀物で唯一、
血管の老化現象を予防する効果のある「ルチン」を
含んでいます。
ルチンは
血管を強くし、毛細血管の弾力性を守り、
血圧や血糖値を降下させる作用、
膵臓の機能を活性化する作用などがあり、
脳溢血や糖尿病の予防に効果を発揮します。
また。
ルチンはビタミンCと一緒に摂取するとその効果が
大きく高まるという研究も進んでいます。
そばに薬味ネギや唐辛子をかけて食べるのは
とても理にかなっているんですね。
ルチンは、
紫外線の害から身を守るための成分なので、
太陽光にさらされる殻に近い部分(そばの実の
外装部分)に多く含まれています。
ですので、
「挽きぐるみ」の粉か、甘皮(種皮)部分まで引き込む
三番粉(表層粉)のものがおすすめです。
その他、
肌に活性と艶を与え、高い美容効果を持つ「シスチン」
も、そばならではの栄養です。
また、
そばには精神的なイライラを鎮めたり、
便秘を改善するといった効果も期待できます。
【作物】
■短期間で収穫でき、丈夫で栽培しやすい
ソバはタデ科の一年草で、
強風が吹くと倒伏しやすいことと、
霜に弱いほかは極めて丈夫な野生的な植物です。
刈り取りまでの期間が80日と短いのが特徴です。
日本で生産されているソバの品種は、
主に夏ソバ、秋ソバに分けられます。
夏ソバは春に種子をまいて晩夏に収穫。
秋ソバは夏に種子をまいて秋に収穫します。
日照時間の長い時期に栽培された夏ソバのほうが、
秋ソバに比べてルチン含有量が多い傾向がある
そうです。
ソバは次のような利点から、
山間地を中心に広く食べられてきました。
・どんなやせ地でも、寒冷地でも栽培でき、
短期間で実を結ぶ。
・食べ方(だんご、そばがき、おかゆ、
そば切りなど)が多様。
・続けて食べても飽きのこない美味しさ。
・消化吸収が良く、栄養価が高い。
・調理が簡単。水で溶くだけ、あるいは生でも
食べられる。
・長期保存ができる。
世界のソバの9割以上がソ連で生産されています。
次いで、中国、ウクライナ、ポーランドと続きます。
日本では毎年約10万トンの需要があり、
そのうち約8割が中国、カナダから輸入されています。
日本の生産量は約18000トンで、世界第8位。
都道府県別生産量は、
北海道が約9000トンともっとも多く、次いで
鹿児島県、長野県、秋田県の順となっています。

そばの実 photo-ac.com
【文化】
■そばの粒食文化
そば米、粒そば、実そばなどと呼ばれるそばの実は、
形のままで食べる習慣が世界各地にあります。
代表的なものは、
ロシア地方の「カーシャ」です。
玄そばを水から煮て、
殻が開くぐらいのタイミングで塩を入れ、
それをお湯から取り出した後にムシロ干しに
してから、丸抜き(脱穀)します。
現在は、煮ないで殻を取ったものが主流です。
山形県では
そば米雑炊やそば米入りおすましなどの
伝統があります。
そば切りとして食べられるようになるまでは、
脱穀したそばの実を雑炊にしたり、
アワやヒエなどの雑炊類と混ぜて食べていました。
■そばの粉食文化
そばのデンプン質はアルファ化(※1)温度が
水温レベルの20数度と低く、煮えやすく
消化されやすい性質を持っています。
つまり水で溶くだけで消化でき、
その上栄養が豊富ということで、
昔の修験者や修行僧などは、
そば粉を持ち歩いて飢えをしのいだといいます。
庶民の暮らしの中では、
長い間、焼き餅や雑炊、すいとんの形で食べられて
きました。
ところが、
食生活が豊かになるにつれて、江戸っ子たちの中で
栄養の偏りから脚気(※2)が大流行。
その時「そばを食べている人は脚気にならない」と
言われ、そばはうどんをしのぐ勢いで、
あっという間に町民たちの人気を集めるように
なっていったのです。
そば切りは、
辛味大根の絞り汁に薬味(ネギとワサビ)を入れ、
ちょっと生醤油をたらした汁で食べる習慣が
各地に残っています。
■年越しそば、引っ越しそばの由来
一年の最後の日である大晦日にそばを食べる風習は、
江戸時代中期頃に始まりました。
「そばのように細く長く生きて寿命を全うし、
家運が末永く続くように」
「切れやすいそばのようにさっぱりと一年の
苦労や災いと縁を切ろう」
との願いが込められています。
また、引っ越しの後、
家主やご近所に挨拶のためにそばを配る風習は、
江戸時代末期頃には始まりました。
そば(近く)に越してきたことに引っかけて、
「おそばに末長くお付き合いをよろしく」
という願いを込めた風習です。
※1
アルファ化・・・
生のデンプン(βデンプン)に熱や水を加えると
(煮たり、ゆでたりすると)、
消化しやすい状態(αデンプン)になること。
※2
脚気(かっけ)・・・
ビタミンB1の欠乏によって起こる栄養失調の一つ。
足がしびれたり、むくんだりする症状が出る。
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