”偽陽性”という呪詛 岩本麻奈

今日は、参議院議員・医師・作家として
ご活躍中の岩本麻奈さんのブログから、
現代医療が抱える闇の深部の一端、
『”偽陽性”という呪詛』をご紹介致します。
岩本麻奈さんは、医療政策改革者として
日本の医療を変えるべく、権益者たちと
闘い続けています。
本記事は、偽善医療により、
私たちが健康であるにもかかわらず、
病気や病人にさせられる仕組み。
診断データだけではない、
”偽陽性の本質=ノセボ効果”についても
わかりやすく教えてくれています。
様々な検査の必要性の有無や、
診断結果について、疑問がある方の
少しでも参考になりましたら幸いです。
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”偽陽性”という呪詛
岩本 麻奈
FB 2026.3.26
健康な人に対する検査には、
独特の“力”がある。
それは、注射とか、手術とかの侵襲の
種類ではない。
もっと静かで、もっと見えにくく、
じわじわ浸食されるもの。
言葉の力である。
「腫瘍マーカーが高いですね」
「どこかにがんの兆しがあるかもしれません」
「念のため、精密検査をしましょう」
この一言を受け取った瞬間、
人はまだ何も確定していないにもかかわらず、
一瞬前の“健康で幸福な自分”から切り離される。
人間というものは、思っている以上に弱いものだ。
たった一つの言葉で、
眠れなくなる。
食事が喉を通らなくなる。
未来の見え方が変わってしまう。
そういう意味でも、検査結果は単なる
数字ではない。
それは、現実の意味づけを変える行為でもある。
プラセボ効果は、多くの人が知っているだろう。
薬効のないものでも、「効く」と信じることで、
実際に症状が改善する現象である。

では、その逆はどうだろうか。
ノセボ効果というものがある。
「悪いかもしれない」と思った瞬間に、
身体がその予測に引き寄せられてしまう
現象である。
ここに、偽陽性の本質がある。
偽陽性とは、単なる検査の誤差ではない。
それはある意味で、“陽性という言葉を
受け取ること”そのものが、身体と心に
影響を及ぼしてしまう現象に近い。
たとえ確率論であっても。
「がんかもしれない」
この言葉が発せられた瞬間、
まだ何も確定していないにもかかわらず、
人はすでに、“病者としての時間”に
入ってしまう。
再検査、追加検査、紹介。
時間、費用、身体的負担。
そして何より、一度ついた疑いは、
何をしても完全には消えない。
無限ループである。
ここで起きているのは、
単なる医療行為ではない。
人生の軌道の変化である。
さらにその終わりなき確認作業の間、
本当に医療を必要としている人の
リソースが圧迫される。
医療費もかかる。
そしてそれには、税金が投入される。
一方で、”偽陰性”という現象も存在する。
本当は異常があるのに、見逃されること。
皮肉なことに、こちらの方が精神的には
穏やかかもしれない。
知らないまま日常を送り、
結果として身体の力で整っていくこともある。
がんという病でさえ、
自然に消えていく現象が報告されている
ことは、あまり知られていないが、
確かに存在する。
もちろん、それを前提にすべきではない。
しかし同時に、すべてを
「一刻も早く見つけることが正義」とする
発想もまた、単純すぎるのではないだろうか。
海外では、がん検診やスクリーニングに
おいて、利益だけでなく、害も必ず語られる。
偽陽性、過剰診断、過剰治療、心理的負担など。
無症状の人に検査を広げることには、
常に慎重な視点が伴う。
しかし日本では、どうだろうか。
「早く見つけるのは良いこと」
「無料なら受けた方がいい」
「若いうちから検査すべきだ」

善意の言葉だけが先行しやすい。
しかしその裏で、
”病の予感が配られている可能性”
については、ほとんど語られない。
言葉には良くも悪くも”力”がある。
だからこそ、その力に無自覚なまま使えば、
人を支えることもあれば、壊すこともある。
医学的には仮説であっても、
受け取る側にとっては現実になる。
それが、「がんかもしれない」という
言葉の重みである。
本当に問うべきなのは、
どこまで正確に検査できるかではない。
その判断が、人の人生に何をしてしまう
のか、である。
私は、検査を全面的に否定したいのではない。
必要な検査はある。
救われる命もある。
しかし、健康な人に検査を勧めるのであれば、
利益だけではなく、害も同じ重さで語られ
なければならない。
そうでなければ、それは予防ではない。
不安の配布である。
はっきり言わせてもらう。
たとえば、若い世代にきわめて稀な疾患があり、
それを見つける検査があるとする。
ごくわずかな人がその検査によって
救われるかもしれない。
しかしその一方で、はるかに多くの人に
偽陽性が出るとしたら、どうだろうか。
その人たちは、その日から何を失うのだろう。
眠りを失うかもしれない。
食欲を失うかもしれない。
未来に対する素朴な安心を失うかもしれない。
「異常があるかもしれない」という一言は、
たとえ後に否定されたとしても、
受け取った人の内側に痕跡を残す。
その代償まで引き受けてなお勧めるだけの
意味が、本当にあるのか。
私たちは、そこをこそ問わなければならない。
そしてもう一つ。
人間の身体は本来、健康になる力、
自らを整える力を持っている。
それを信じるのか。
それとも、すべてを現代医療という力で
管理しようとするのか。
そこに、その人の健康思想が立ち現れる。
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