財政破綻がもたらした「理想の医療」

全国の病院の約6割が赤字と言われています。
そして、国立大学病院の赤字額は、
2023年度が60億円
2024年度が286億円
2025年度が400億円以上(見込み)
と、この3年間で巨額の赤字が増大し、最大の危機とNEWSで報じられています。
※日テレNEWS『国立大学病院 最大の危機 巨額赤字の見通し 命守る現場で何が』
(2025/10/3)
SNSなどでも医療破綻!医療崩壊!という文字が躍っていますが、そんな中、
20年近く前になりますが、北海道の夕張市が財政破綻し、そのため地元の
総合病院が診療所になったという大変なNEWSが飛び交いました。
さぞかし大変と思いきや、その病院で勤務医として働いていた森田洋之医師の
実体験によると、「病院が無くなった夕張市で人々が健康になった」と言います。
それはどういうことなんでしょうか?
その訳とは?
この出来事は日本の今後の医療の在り方について、一石を投じ、示唆に富んで
いるように思います。
そして、皆さん自身と医療との関わり方についても、一考してもらえるきっかけに
なりましたら幸いです。
それでは、ヘルスアカデミー<ルネサンス編集部>メルマガ より、『財政破綻が
もたらした「理想の医療」』をご紹介致しますので、参考にしてください。
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財政破綻がもたらした「理想の医療」
ヘルスアカデミー<ルネサンス編集部>メルマガ
2025年2月27日 16:01:48 JST
本日のメルマガでは、“病院が無くなった市で人々が健康になったワケ”
についてお届けします。
講師は在宅医療・地域医療が専門の現役医師であり、医療ジャーナリストでも
ある森田洋之先生です。
※このメルマガは、2022年8月に収録された「国民を騙す嘘だらけの日本医療」
より抜粋。編集部にて一部編集を行なっています。
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あなたは覚えていますか?
2006年に夕張が財政破綻したことを…
夕張ではその影響で、病院も経営を維持するのが困難に…
病院にすぐにかかることができず、持病が悪化したり亡くなったりする
人が増えるのでは…
と思いきや、不思議なことにむしろ元気な人が増えたそうなんです。
一体、どういうことなのでしょうか?
当事、夕張の病院で勤務していた医療ジャーナリスト兼医師の森田洋之先生に
そのカラクリを教えていただきました。
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私は約15年前、財政破綻した夕張市で医師として働いていました。
そこにはもともと総合病院があったのですが、財政破綻の影響を受けて
縮小し「診療所」となりました。
171個あったベッドが19個に減り医師も、10人ほどいたのが2~3人に
減ってしまいました。
救急や大きな手術などができなくなってしまったので、そういった専門的な
ことは札幌や岩見沢などの大きな都市にお任せすることにしました。
診療所の僕らは軽い怪我の処置や在宅医療などできることをしっかりやって、
できるだけ手術などの専門的な治療に頼らないようにしていました。
ちなみに、夕張市というのは今も昔も、北海道の中で高齢化率が1番高いんです。
その高齢者の町で、高度な医療ができなくなってしまうこれは悲惨な状況に
なるかなと思ったんです。
でも、5年経った時にデータを取ってみたら全然そんなことはなかった。
まず、市民の死亡率はほとんど変わりませんでした。
さらに、19個しかなかった入院用ベッドがほとんど埋まることがなかったんです。
それはなぜか。
理由は意外とシンプルで、ほとんどのおじいちゃん、おばあちゃんたちは
人生を最期まで自分の家で過ごしたかったからです。
入院して、病院で最期を迎えたいという人はほとんどいませんでした。
僕らは、その人が最期までどんな生活を送りたいのか、それをサポートする
のが仕事でした。
そのために入院が必要ならば、一時的に入院してもらうこともあるけれど
ほとんどそんなことないんですよ。
本当に腹を割って、いろんなことを話しながら病院と家のどっちがいい?
と聞くと、みんな家がいいって言います。
だから、家で過ごせるようにサポートする医療があると実は入院自体が
ほとんど必要なくなっていくんです。
これは全国でも同じことが言えると思います。
ほとんどの高齢な患者さんの場合は入院していても在宅でもやれる治療は
変わらないんです。
点滴も採血も、ほとんど何でも在宅でできます。
しかし、普通の医療は、入院を希望したいかどうか、患者さんの意見を聞いて
すらいないのです。
でも、本来医者の役目は患者さんの健康や幸せ、人生の最期までどんな生活を
したいのかそれを支えることなのです。
夕張では、病院がなくなっても住民の健康はほとんど損なわれませんでした。
その証拠に、病院がなくなってからも市民の死亡数はあまり変わりませんでした。
出典:森田洋之「医療経済の嘘」(ポプラ新書、2018)
何より、住民の笑顔がものすごく増えたんです。
それは、自分の治療や最期の過ごし方について医者から一方的に決められる
のではなく、自分の意思が尊重されるようになったからではないでしょうか。
この経験を踏まえて、僕はやっぱり日本全体で医療のあり方について
しっかり考えなければいけないと思っています。
ーーーー
<講師紹介>
“医学×経済学”の現役医師 森田洋之先生
1971年横浜生まれ。一橋大学経済学部卒業後、宮崎医科大学医学部入学。
宮崎県内で研修を修了し、2009年より北海道夕張市立診療所に勤務。
同診療所所長を経て、鹿児島県で研究・診療・執筆を中心に活動。
専門は在宅医療・地域医療・医療政策等。
2020年より鹿児島県県南九州市に、ひらやまのクリニックを開業。
南日本ヘルスリサーチラボ代表。日本内科学会認定内科医。
元鹿児島県参与(地方創生担当)。
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