虫歯は不潔病ではなく、伝染性の細菌感染症

先日、村津和正歯科医師の著書『歯は命とつながる臓器』から
「歯は脳のセンサーだった」をご紹介致しました。
続きまして、今日は、「虫歯は不潔病ではなく、伝染性の細菌感染症」と
「甘いものを食べるから虫歯になるの?」をご紹介致します。
今や虫歯や歯周病などの口腔のトラブルや、そのケアを知ることは必須と
なりました。
本情報が少しでも皆さんのお役に立てましたら幸いです。
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『歯は命とつながる臓器』
村津和正著 三五館
■虫歯は不潔病ではなく、伝染性の細菌感染症
私たちがいくら視力がよくても、細菌やバクテリアを見ることはできません。
もしそのようなものが見られる目を持っていたとしたら、私たちの住んで
いる空間は、バクテリアや細菌に覆われていることがわかるでしょう。
私たちの身体も同様です。
いくらきれいにしても口の中、腸の中にはたくさんの細菌やバクテリアが
棲んでいます。
皮膚の上にも、体のいたるところに細菌や微生物は棲みついていて、
私たちと仲良く共存共栄しています。
そして口の中にもたくさんの細菌が棲みついています。
その数なんと700種類。
唾液1ミリリットル中には、約1億個。
さらに歯の表面についた歯垢=プラーク1グラムには、なんと1000億個
もの細菌がいると言われています。
想像を絶する数です。
しかし、ご安心ください。
これらは口腔常在菌と呼ばれ、病原性のない、逆に口の中の細菌レベルの
環境を守ってくれている私たちに味方なのです。
外部から病原性のあるよそ者細菌やウイルスなどの微生物が入ってきても、
唾液の免疫力と協調して、そのよそ者がデカイ顔して棲みつかないように、
排除してくれるのです。
しかし、その排除がうまくいかずに、虫歯や歯周炎を引き起こす原因となる
虫歯菌や歯周病菌に感染すると、歯という大切な臓器が損なわれる危険性が
出てきます。
ここで、虫歯菌について少し学問的な話をさせていただきましょう。
国立感染症研究科学部が中心となって編集した医学書(『う蝕細菌の
分子生物学ー研究の成果と展望』監修/武笠英彦、編集/今井奨・西沢俊樹・
花田信弘・福島和雄、クインテッセンス出版、1997)の序論で、
明確に言い切られている言葉があります。
「1949年 W.D.Millerが、う蝕の化学細菌説(chemico-parasitic theory)
を発表して以来、1世紀以上にわたる研究の結果、今日では、う蝕が
微生物感染症であることを疑う人はいない」というのです。
そして、この「う蝕」が特定の病原性細菌(ミュータンス連鎖球菌)による
「伝染性」の感染症であることが医学的に、分子生物学的に確認されています。
現在、私たちを苦しめる虫歯菌は、「ストレプトコッカス・ミュータンス」
「ストレプトコッカス・ソルビナス」という名前の原因菌です。
すでに、遺伝子の組成までわかっています。
実は、虫歯はコレラやペストと同じ伝染性の感染症だったのです。
以前は、もともと口腔内に棲みついている常在菌が、歯磨きが不十分だったり、
砂糖を摂りすぎると起こしてしまう、一種の不潔病、あるいは生活習慣病の
ように思われていましたが、それは厳密には間違いです。
実は常在菌ではなく、他から伝染してきたよそ者病原菌である虫歯菌が
巣食ったために病巣ができ、歯が崩壊してしまうのです。
虫歯は完全な感染症なのです。
そのよそ者虫歯菌が、歯や口の中の粘膜の上をビッチリ隙間なく棲みついて
くれている口腔常在菌の中に割り込み、勢力を拡大してしまったのです。
お菓子などの砂糖のダラダラ食いや、寝る前に食べた後、手入れを怠ったり
すると、伝染してきた虫歯菌が増殖しやすくなります。

■甘いものを食べるから虫歯になるの?
では、ここで虫歯の基本的なことを学びましょう。
虫歯菌はどのようにして虫歯を作っていくのか、ということについてです。
「甘いものを食べると虫歯になりますよ」とよくいわれます。
というのは、虫歯菌の大好物は、砂糖だからです。
砂糖は、ブドウ糖と果糖からできています。
そして、この二つが分かれる時に高いエネルギーを出します。
この高エネルギーが虫歯菌に影響します。
虫歯菌(ミュータンス菌)が分泌する酵素のGTF(グルコシルトランス
フェラーゼ)は、砂糖がブドウ糖と果糖に分かれる時に出すエネルギーを
用いて、ブドウ糖から不溶性の多糖類グルカンを作ります。
このグルカンが歯に付着してプラーク(歯垢)を形成するのです。
プラークの中では、虫歯菌が分泌する酵素のデキストラナーゼが、
グルカンを分解し、それをさらにエサとして酸を作り続けるのです。
こうなると、たとえ甘い物を食べたり飲んだりしていない時でも、
酸が産出され続けます。
この酸が、歯のカルシウム(ミネラル)を溶かし始め、歯に穴を
開けていきます。
つまり虫歯になるわけです。
ただし、虫歯菌がいるからといって、虫歯菌=虫歯になるわけでは
ありません。
虫歯菌と糖分とプラークが結びついて、はじめて虫歯ができるからです。
ところが、虫歯菌の多いプラークは、粘着性で取りにくいため、唾液の
少ない部分や歯ブラシで届きにくい部分、エナメル質の弱い部分などに
残ってしまい、その部分からミネラルが奪われ続けます(脱灰といいます)。
ただし、エナメル質には神経が通っていないので、この時点ではまだ
痛みを感じません。
貪欲な虫歯菌は、さらに、エナメル質の深い層まで侵入していきます。
そのまま放置していると、虫歯菌の他にも酸を出す細菌が加わり、
エナメル質を破壊し、象牙質まで侵入した結果、冷たい物に痛みを
感じることになるのです。
砂糖を主材料とする和菓子にしろ洋菓子にしろ、それらはすべて素晴らしい
文化です。
適度な甘い物は、人生を豊かにする重要な楽しみの一つでもあります。
茶道でも一服の前に季節の伝統の和菓子をいただき、そしてお薄のお茶を
いただくと、えも言われぬ至福感に包まれます。
また、趣向を凝らした洋菓子をはじめ、チョコレートなどなどもしかり。
砂糖を食べると虫歯になるから、「一切口にしません」というのも一つの
生き方でしょうが、虫歯菌を根絶し、虫歯を気にすることなく、適量の
甘い食文化を存分に心おきなく楽しみながら、愉快で笑いに満ちた人生を
エンジョイできたら、それも素晴らしいのではないでしょうか。
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