母から子へ乗り移る微生物

お陰様で発酵水を16年間取り扱いしてくれているOEM(相手先ブランド)
への出荷作業が終わって一段落しましたので、少しずつブログを再開して
いきたいと思います。
よろしければお付き合いください。
今日は、いつも私が参考にさせていただいている築地書館さんの書籍
『生物界をつくった微生物』から一部抜粋し、「母から子へ乗り移る
微生物」をご紹介致します。
ご存じの通り、母親のお腹の胎児は「無菌状態」と言われています。
それが細菌やウイルスだらけの世界に生まれてくるのに、一体どんな
防御機構が備わり無事に生まれるのか、そしてその後どのようにして
人体常在菌を獲得していくのかがわかります。
本書にはご紹介したい壮大なテーマもたくさんありますが、身近な
母から子への微生物のバトンリレーに素晴らしい命のつながりを
感じます。
ーーーーーーーーーーー
『生物界をつくった微生物』
ニコラス・マネー著 築地書館
母から子へ乗り移る微生物
我々人間は口から肛門までつながった消化管の中や、性器の湿った場所、
命を支える呼吸器などに、微生物の大集団を詰め込んで運んでいる動く
生態系なのだ。
人間の皮膚は、面積が最も広い病原菌に対抗するバリアーだが、それは細菌や
酵母でできた4番目の防御生態系に覆われている。
我々のDNAの大部分がウイルス由来であるのと同時に、真核生物としての
我々の細胞も微生物的要素から成り立っていると考えると、彼ら(微生物)と
我々(受精卵から始まる細胞集団)の間の違いにこだわることが、ますます
どうでもよくなってしまいそうである。
デカルトは「我思うゆえに、我あり」と書き残し、地球上におけるほかの
生命体と我々は、超自然的に区別されているという古来の信念を普及させた。
400年経っても、まだ哲学の主流は人類の優越感に浸っている。
ところが、最近になって生物学がひどく違ったことを言い始めた。
それは、我々人間が培養された微生物の複雑な混合物以外の何物でもない
(それ以上でもなく以下でもない存在)とする考え方だが、もしそうなら、
人間が「万物の霊長」だとする考えは、理屈に合わなくなるのである。
さて、まず手始めに、母親の膣とその滑り具合から話を始めよう。
羊膜の中の生命体は、子宮の外に出て最初に微生物と出会うショックに
耐えられるように、上手に守られている。
胎児の免疫による防御機構は、胎盤を通して送られる母親の複数の抗体に
よって、不意打ちに備えるように仕組まれているのだ。
流産する可能性のある母体の防御反応から、自然に胎児の組織をカモフラージュ
する分子を分泌する胎盤を持つなど、妊娠は病原菌感染と多くの点で共通した
特徴を持っている。
胎児は、発達する器官や大きい異質な母体のタンパク質に対抗するより、
むしろそれに耐える制御性免疫細胞を作り出す。
いったん外に出ると、幼児の免疫機構は周辺にいる微生物の詳細な一覧表を
急いで作り、母乳の中にある抗体に助けられて、細菌が有害か無害か判別し始める。
生きた微生物の大群と最初に出会うのは誕生の際だが、そのときすぐ新生児は
膣内細菌に覆われる。
これが無菌状態の胎児を、100兆個もの微生物と母体の共生系に引き渡す
始まりなのである。
膣から新生児に移行する細菌の中で最も多いのは乳酸菌のラクトバチルスだが、
新生児は大便についている微生物も一緒に取りこむ。
つまり、これらの細菌は飲みこむと消化管に、息をすると鼻や肺に入り、
誰かが抱き上げたり、抱きしめたり、鼻をこすりつけたり、キスしたりすると、
汚れのない皮膚に細菌が接種されるというわけである。

子どもが乳首に触るか、哺乳瓶からミルクをガブ飲みするたびに、新生児を
取り巻く微生物叢はますます拡大する。
帝王切開で生まれた赤ん坊は、膣の微生物叢を素通りすることになるが、
これについては後で触れることにしよう。
細菌細胞数の増加は、主役になる異質なグループが交替するにつれて、
着実に種の多様化と並行して進む。
ラクトバチルス属とファーミキューテス門(訳註:腸内細菌の一種で、
グラム陽性菌)の近縁種が、乳児の若い腸管の優占種になり、母乳や
代用品のベビーフードを食べる。
野菜が食事に加わると、これらの細菌は腸内にある食べ物の30%以上を
二番手のバクトロイデス門の細菌に譲り、この細菌群は我々が食べるのを
止めるまで一緒に働き、我々を食べないように努めている。
生後1ヶ月経つと、大便の中の微生物叢に大きな変化が現れる。
新生児の腸の運動が始まると、上皮細胞や胆汁や子宮の中で摂取されていた
羊水などが混じった、胎便という黒い粘質便が出る。
胎便の微生物叢は単純で、ファーミキューテス門の細菌が多く、微生物叢の
幅は日が経つにつれて広がるが、最初の3ヶ月間はファーミキューテス門が
優勢である。
乳幼児の腸内微生物生態系は、食べ物の種類によって決まるが、池の中の
生物群と同じように、さまざまな環境変化によってかき乱される。
詳細な分子生物学的研究によると、乳幼児の大便の細菌群は、発熱によって
急激にプロテオバクテリア門の細菌や放線菌に変化したという。
乳幼児の腸内にいる真核生物を遺伝子で調べると、菌類もこの刺激で増殖したが、
その増加原因が熱だったのかどうか、よくわからないという。
なお、腸内微生物生態系の構図をもう少し複雑に描くとすれば、細菌や菌が
正体不明のウイルスによる攪乱に反応している可能性が考えられる。
いずれにしろ、幼児の熱が下がると、よそ者は数日で姿を消したそうである。
もう一つ、母乳から牛乳に切り替えた9ヶ月目には、乳幼児の微生物叢に
一時的な変化が現れ、耳の感染症を予防する抗生物質を投与すると、
やはり同じように変化したという。
著者紹介
ニコラス・P・マネー
イギリス生まれ、エクセター大学で菌類顎を学ぶ。
アメリカ合衆国オハイオ州オックスフォードにあるマイアミ大学で、植物学と
ウエスタン・プログラムの学部長を務める。
70報を超える菌類学に関する研究論文を書き、『ふしぎな生きものカビ・
キノコ』(築地書館、2007年)、『チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話』
(築地書館2008年)など、先に4冊の菌類に関する単行本を出し、彼の研究は
『ネイチャー』誌上で「素晴らしい科学的・文化的な研究である」と称賛された。
ブログカテゴリー
- お知らせ (21)
- ご愛用者様からのお便り (3)
- ご挨拶 (6)
- イベント情報 (2)
- ウイルスの不思議 (4)
- ゲノム編集食品 (10)
- 人生・仕事・生き方 (52)
- 体の不思議 (19)
- 健康・元気 (38)
- 免疫力・自然治癒力 (8)
- 呼吸・呼吸法 (2)
- 地震・災害・天変地異 (1)
- 夢と希望 (1)
- 大自然・地球 (19)
- 天・地・人 (6)
- 宇宙の不思議 (2)
- 微生物の不思議 (6)
- 意識と心と体 (16)
- 教育問題 (1)
- 旅・旅行 (1)
- 春夏秋冬 (1)
- 最新の叡智 (12)
- 果実・ハーブガーデン (1)
- 植物の不思議 (6)
- 氣 (2)
- 水の不思議 (5)
- 水道水、飲み水 (5)
- 汚染食品と現代病 (30)
- 油と健康と病気 (9)
- 海の不思議な力 (6)
- 海藻の力 (28)
- 環境問題 (6)
- 生命の不思議 (9)
- 生命史 (3)
- 病気・医療・介護 (99)
- 発酵水の魅力 (22)
- 発酵食品 (7)
- 社会問題 (65)
- 美容 (7)
- 脳の不思議 (7)
- 腸内細菌叢・人体常在菌 (14)
- 自然療法 (80)
- 自然食品 (2)
- 虫歯・歯周病などの自然療法 (3)
- 農と食 (25)
- 野草・薬草・ハーブ (11)
- 電磁波問題と対策 (1)
- 音・周波数の不思議 (3)
- 食と食養法 (74)
- 食と食養生 (4)
- 食物繊維・発酵性食物繊維 (1)
- 食糧問題 (11)
バックナンバー
会社情報
株式会社発酵水
425-0054
静岡県焼津市一色169-1
TEL:054-207-7951
営業時間:9:00~17:00
定休日:土・日・祝祭日
425-0054
静岡県焼津市一色169-1
TEL:054-207-7951
営業時間:9:00~17:00
定休日:土・日・祝祭日
モバイルサイト
携帯やスマホでアクセス