皮膚のかゆみが体を守る!驚きの免疫メカニズム
人体最大の臓器「皮膚」。
皮膚バリアとして様々な外敵から身を守るため、免疫器官と言われたりすることもあります。
また、皮膚は出口として毒素・老廃物を排出するため、最大の役目は排泄器官としての働きとも言われています。
そしてその排泄物の皮脂や汗、老廃角質層(垢)などを皮膚常在菌がエサとして食べて、皮膚上で「発酵」が行われて皮膚バリアが形成されます。
ここにも発酵が出てきましたね。
私たちの人体のありとあらゆるところで共生してくれている人体常在菌が発酵を行い、私たちを生かしてくれているのですね。
本当にうまく出来ていて、素晴らしい仕組みですね。
もちろん微生物発酵は、人体だけではなく植物や動物、大自然の山や森、海や川など、地球のありとあらゆるところで行われ、それゆえこの地球は人間界ではなく、微生物界と言われているのです。
今日はその皮膚の新たに判明した最新の医学研究成果から、「皮膚のかゆみが体を守る!その驚きの免疫メカニズム」をご紹介させていただきます。
それでは詳しいことは下記のアドレスからご覧になり、参考にされてください。
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皮膚のかゆみが体を守る!最新医学研究が解明した驚きの免疫メカニズム
大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
2024/11/2(土) 11:30
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6eba3288153053405235b205d0e2375380244663
【かゆみを感じる神経細胞の驚くべき防御機能】
私たちの皮膚には、かゆみを感じる特殊な神経細胞(MrgprA3ニューロン)が存在します。
この神経は単にかゆみを感じるだけでなく、体を守る重要な免疫機能も持っていることが、最新の研究で明らかになりました。
特に注目すべきは、この神経が寄生虫などの感染から私たちを守る働きを持っていることです。
かゆみを感じる神経は、皮膚の免疫細胞と密接に連絡を取り合い、効果的な防御システムを構築しているのです。
研究チームは、この神経細胞を光で制御できるように遺伝子操作したマウスを用いて実験を行いました。
その結果、かゆみを感じる神経を活性化すると、皮膚の免疫システムが強化され、寄生虫の感染に対する抵抗力が高まることが分かりました。
【寄生虫感染とかゆみの複雑な関係】
研究では、住血吸虫という寄生虫に注目しました。
この寄生虫は世界中で約2億5000万人に感染し、深刻な健康問題を引き起こしています。
日本では比較的稀な感染症ですが、熱帯・亜熱帯地域では今でも重要な公衆衛生上の課題となっています。
興味深いことに、ヒトに感染する住血吸虫(シストソーマ・マンソーニ)は、かゆみを感じる神経の働きを抑制することで、効率的に体内に侵入できることが分かりました。
これは寄生虫が進化の過程で獲得した巧妙な戦略といえます。
一方、鳥類の住血吸虫は、人間の皮膚に接触すると強いかゆみを引き起こします。
結果として寄生虫は人体内での生存が困難になります。
この違いは、寄生虫と宿主の進化の過程で形成された絶妙なバランスを示しています。
人間に感染する住血吸虫は、かゆみを抑制することで免疫系の攻撃を回避し、効率的に感染を成立させているのです。
【皮膚の免疫システムにおける画期的発見】
かゆみを感じる神経は、皮膚に存在する免疫細胞の働きを精密に調整することで、感染症から体を守っています。
具体的には、以下のようなメカニズムが明らかになりました:
1. IL-33という重要な免疫調節タンパク質の産生を制御します。
2. マクロファージや樹状細胞といった免疫細胞の活性を調節します。
3. 炎症性サイトカインの分泌を促進し、効果的な免疫応答を引き起こします。
4. γδT細胞という特殊な免疫細胞の働きを活性化します。
この研究では、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が、神経と免疫細胞の communication(情報伝達)に重要な役割を果たしていることも明らかになりました。
この研究成果は、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎など、かゆみを伴う様々な皮膚疾患の新しい治療法開発につながる可能性があります。
特に、神経と免疫システムの相互作用に着目した治療戦略は、従来の治療法では十分な効果が得られなかった患者さんにも、新たな治療の選択肢を提供できる可能性があります。
実際の臨床応用に向けては、以下のような展開が期待されます:
1. かゆみを制御する新しい治療薬の開発
2. 免疫系を適切にコントロールする治療法の確立
3. 寄生虫感染に対する予防・治療戦略の開発
4. アレルギー性疾患の新しい治療アプローチの確立
かゆみは私たちの体を守るための重要な警告信号です。
過度な掻破は皮膚を傷つける原因となりますが、適度なかゆみ反応は実は私たちの健康を守る重要な役割を果たしているのです。
今回の研究は、皮膚科学における神経免疫学の重要性を示す画期的な成果といえます。
今後、さらなる研究の進展により、より効果的な皮膚疾患の治療法が開発されることが期待されます。
参考文献:
Nature Immunology | Volume 25 | November 2024 | 2068?2084
MrgprA3 neurons drive cutaneous immunity against helminths through selective control of myeloid-derived IL-33
大塚篤司
近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB’zファン。
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